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「キツネの嫁入り」
(東光地区)<全文>

 私ども夫婦が歌志内に来たのは、昭和三年ですよ。最初に落ち着いたところは上ノ沢(現在の東光一区の一番奥)で、その翌年、西ノ沢(その少し手前)に移りました。上ノ沢も西ノ沢もまだ炭住の少なかった時代で、山の中という感じでしたねえ。

 キツネもたくさんいて、せっかく作った畑を、よく荒らされたものでした。キツネにまつわる話を二、三しましょうか。夜になると、山の方に、ポツ、ポツと明かりがともったようになることがあったんですよ。私どもは「ああ、キツネの嫁入りだなあ」って話し合ったものです。点々と行列をなしている様子は、きれいなもんでしたねえ。

 また、ある時、ある人が橋の欄干に腰をかけて、体をゴシゴシ洗っていましてね。通りがかった人が、変に思って、「おい、お前さん、そこで何をしているんだね」と声をかけたんですと。するとその人が、「いやあ、お風呂に入っているんだが、いい湯加減でね。あんたもどうだい」って、平気な顔しているんですよ。

 やめる様子はないし、こりゃあキツネに憑かれているんだろうということになり、家に連れて帰って、神様に頼んで落としてもらったということです。正気に戻ったので、笑い話ですみましたが。

 今もよくキツネが出るという話を聞きますが、化かされたということは聞きませんねえ。